それは数年前にパートナーとタイのプーケットに旅行に行った時の話です。
プーケットは2回目でした。直行便は無いので香港乗り換えでようやく空港に到着。
宿泊するパトンはそこから更に車で1時間程かかります。
捕まえたタクシーがかなりのボッタクリでしたが早くホテルまで行きたかったので仕方なく乗りました。
ネオンのきらめくパトンの街。テンションは上がります。ホテルに到着し、その夜は屋台で食事をし、早めに就寝しました。
次の日の朝食の後、向かいのレンタバイク屋でスクーターを借り、パトンからしばらく南下したところにあるナイハンビーチという場所に行きました。
プーケットは山が多く、しかも道の勾配は日本では考えられない程に急です。
しかも車がどんどん煽ってきて死ぬかと思いました。
しかし、本当の恐怖はこれから訪れる事になるのです。
1時間程スクーターで海沿いを走ると美しいナイハンビーチが見えてきました。
ビーチ沿いにバイクが沢山駐輪してある場所があったのでそこに停めることにしました。
海はエメラルドグリーンでビーチはベージュの砂でした。
私達は海を望む最前列にビーチベッドを借り、私は早速ビールを頼みました。
しばらくマッタリしてからゴーグルを持って泳ぎに行く事にしました。
私は子供の頃にスイミングスクールに通っていたので水泳には自信がありました。
海に入ると思ったより冷たく無くむしろ生ぬるいくらいでした。
最初は足が底に着くところで泳いでいたのですが、泳いでいる内に気づくと起きの方にいる事に気付きました。
「あれ?岸に戻らなくちゃ。」
そう思いゆっくりと岸まで泳ぎ始めました。
そろそろ着いたかなと水から顔を上げました。
「え?」
岸との距離は全く縮まっていないのです。
ゆっくり泳ぎすぎだな、と思いもう少しスピードを上げる事にしました。
なんせ私は子供の頃にスイミングスクールに通っていたのです。泳ぎには自信があります。
しばらくハイスピードで岸まで泳ぎました。
「さあ、またビール飲むか。」
そう思い顔をあげました。
血の気が引くのを感じました。
ほぼ岸との距離が変わっていません。だんだん焦ってきました。
「もしかしたら離岸流に流されてるかも…」
そう思いました。
離岸流の事はテレビなどで見聞きして知っていました。
泳ぎに自信がある人でも戻れないと聞いたことがあります。
私は焦ってはいけない。冷静になれ、と自分に言い聞かせました。
ビーチにはライフセーバーが居ました。しかし、タイ人のライフセーバー達は何人かでベラベラ話しておりこちらに気づいていません。
仕方ありません。私は「冷静に冷静に」と自分に言い聞かせ思い切り岸に向けて泳ぎました。
だんだん体力が消耗してきて頭の中に「死」という文字が浮かびます。
しかし泳ぎました。どうにか足が着くところまで来ました。
安心して底に足を着くとすごいスピードで水が沖に流されていて足が滑ります。
その時、ライフセーバーがサーフボードに乗ってこちらに来ました。
「ヘルプ!」
私が言いましたがライフセーバーは私に何か言うとどこかに行ってしまいました。
「信じられない」
仕方ないので何も足を滑らせながらも頑張ります。
ようやく流されない所まで来て、私はビーチに倒れ込みました。
「助かった…」
本当に死ぬかと思いました。
私のすぐ横に旗が立っていました。
「No swimming」と書かれていました。
通りで誰も泳いで無いわけでした。
ビーチベッドに戻るとパートナーが鬼の形相をしていて怒られました。
まわりの外国人達は私が泳いでいるのを見て「クレイジー」とか言っていたそうです。
恥ずかしくて更に死ぬかと思いました。
この記事はランサーズにて今までの人生で死にかけたエピソードで募集しました
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