【旅行記】アメリカ最大の公園デスバレーをドライブしたら、成長した話

夢の実現

ハリウッド映画などで、アメリカの何もない広大な大地を颯爽とドライブするシーンを見たことがある人は多いはずだ。
私はそんなシーンを見て、「いつかこんなドライブをしてみたい」という夢を抱いていた。

そして去年、ついにその夢を叶えることができた。アメリカ最大の国立公園「デスバレー」での1人ドライブを決行した。
広大な大地と青い空、そして真っ直ぐ続く一本道を目の前にして私は「自由」を感じていた。

しかし、あの映画の数秒のシーンしか想像していなかった私は、アメリカの広大さを完全に見くびっていたことに、気づくのだった。

デスバレーとは

デスバレー国立公園は、カリフォルニア州とネバダ州をまたぐ、総面積13,158平方キロメートルの公園である。私たち日本人が知っている「公園」という概念はなんだったのかと思うほどの広さである。

年間を通して非常に暑く乾燥しており、ほどんど砂漠だ。アメリカの日差しはどこへ行っても強い印象だが、ここデスバレーの日差しは格別だった。

私がドライブした際は、生き物の1匹も見ることはできなかったが、砂漠環境に適した動物も生息しているらしい。

公園内には過酷な砂漠環境に適応した多くの種の動植物(哺乳類:51、爬虫類:36、魚類:5、鳥類:346、植物:1042、等)が生息しており、クレオソート・ブッシュ、ビッグホーン、コヨーテ、デスバレー・パプフィッシュなどを観察することができる。
ーWikipediaより

19世紀末からたくさんの鉱石の採掘が行われ、いくつも街が作られては消えていったのだそう。1933年に国定公園に、1994年に国立公園に指定された。それに伴って採掘事業も禁止されていった。

何もないという怖さ

ロサンゼルスからレンタカーを借りて、東へ向かうこと約4時間
高速道路を降りてから建物が一切見えなくなり、ただひたすら砂と岩山だけの道が続いていく。

しばらく進んだところで、デスバレーの入り口に到着した。入り口と言っても看板があるだけで、受付やゲートなどは無い。

デスバレーはスターウォーズの撮影場所に使われた場所でもあり、見渡す限り人間が築いてきた文明の形跡が(道路以外)ほとんど見えない場所である。
私は、「本当に違う星に来たのではないか」と錯覚するほど壮大な景色にただただ感動していた。

しかし、そんな何もない景色がひたすら数時間も続くと、人はだんだん怖くなってくる。私が見える範囲では、前にも後ろにも車は通っておらず、本当にこの大地に自分ひとりだけしかいないような錯覚に陥る。

一度不安な気持ちになると、更に悪い状況を想像するようになり、
「もし今車が壊れて進めなくなったらどうしよう・・・」
「スマホが壊れて連絡手段がなくなったらどうしよう・・・」
などと考え出してしまう。

しかし今の時代、道路と地図があるため、進む方向も距離もある程度は把握できるので、この道路がなかった時代にここに来た人たちの不安と比べれば、私の不安など無いにも等しい。そう言い聞かせ、自分の心を落ち着かせた。

デスバレーの名前の由来は、この地に初めて足を踏み入れた人々が、命からがらそこから抜け出した時に、
「グッバイ・デスバレー(死の谷よ、さようなら)」
と言ったことに由来されているという。嘘みたいな話だが、そのセリフを言ってしまう気持ちが、ここに来て初めて納得できた。

当時の人々の不安な気持ちを想像すると、恐ろしくなってしまい、結局また不安に襲われるのだった。

人間の想像力

しかし考えてみると、この何も無いところからも人は想像をし、何かを生み出そうとしてきた。ここが採掘場から観光地になったのも、人がここを「美しい」と感じたからだろう。

そんなシンプルな感情から、広大な砂漠に道路を作るという大事業が行われた。
当たり前のことのようだが、実際車を走らせてみると、この道路を作った人たちの途方もない労力に敬意を払わざるを得なくなる。

そして私のような観光者が、一抹の不安と興奮を携えながらこの大地を「美しい」と思うことができているのは、想像以上にとんでもないことなのだと気付かされる。

ここであの大作映画スターウォーズが撮影され、世界中の人々を熱狂させた。地球ではない惑星を想像し、そこから生まれたキャラクターたちが、ここで壮大なストーリーを紡いでいった。

こんな砂と岩山しかない場所でそんなことをするのは、間違いなく地球上で人間だけである。そう思うと、人間というのは本当に不思議な生き物だなあ。

不安になるのも飽きてきた私は、ふとそんなことを思いながら、車を走らせた。

旅は人を成長させる

一時はこの何もないこの道が永遠続くのではないかと怖くなったりもしたが、無事予約した宿に到着することができた。

不安に飽きるほど運転した結果、「4〜5時間の運転なんて楽なもんだな」とまで思えるまでに成長していた。(運転の感覚がアメリカ人になっただけとも言える)

その翌日から2日間、まさかの通行止めにあったり、険しい山道を通りながらもひたすら運転し続け、カリフォルニア州サクラメントまで、無事何事もなく到着することができた。

言ってしまえばただ運転し続けただけだったが、一つの過酷な旅を終えた達成感に満足していた。この何もないと思っていた大地で、普段考えないようなことをたくさん思い考え感じ、いつの間にか、少しだけ強く大きくなったなと実感することができた。

正直、「もうしばらく運転はいいや・・」と思っていたのだが、この旅行記を書いていると、またあの何もない広大な大地が恋しくなった。

もしカリフォルニアに行くことがあれば、一度デスバレーに行ってみることをおすすめする。あまり軽い気持ちで行くところでもないが、何もないこの場所で、あなたが何を思い、想像するのかを確かめに行ってみると、思わぬ成長を遂げられるかもしれない。

筆者

おおつか えりこ
webライター、webデザイナーとして活動中。
海外中でグラフィティーアートを探している、探検家でもある。
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