最近読んだ本の中で、ものすごくおもしろい本があった。
その本は、「痛快!憲法学」という、憲法の本である。
前提として言っておきたいのは、私は20代の女で大学も出ておらず、別に政治や経済に詳しいわけではない。
文化人類学や宗教に少し興味があり、そういった学問は政治や経済とも繋がっているため、その流れで少し興味を持っているという程度である。
そんなどこにでもいる一般人の私に、「憲法学おもしろい!」と思わせてくれたこの本のことを少し紹介しよう。
この本との出会い
私が兄と一緒に図書館へ行った時、私が本を借りようとカウンターに向かうと、後ろから兄がおもむろに1冊の本を差し出し、「これ読んでみて」と勧めてきた。
「憲法学」という小難しいワードとは裏腹に、表紙には漫画家、イラストレーターの江口寿史さんが描いた、着物姿の可愛い女の子3人が手を繋いでいる。そして、その後ろにドンと日の丸が配置されており、なんともインパクトの強いビジュアルだ。
そして中をペラペラとめくってみると、各章のトビラには、漫画「北斗の拳」の場面が切り取られ、異様な存在感を放っている。

こ、これは、良い悪いは分からないが、きっととんでもない本だ・・・
と私は思った。
兄がこの本を私に勧めた理由は、年末にNHKで「新・映像の世紀」という番組を一緒に見たからだった。
その中で、戦時中の政治や経済、人々の生活の実情が映し出されており、それについて兄と私は色々な話をした。その延長線上でこの本を勧めてくれたのだった。
読んでみると、著者と編集者二人の会話形式になっており、とても読みやすく、非常にわかりやすい。2人のキャラも立っていて、たまにジョークなんかも入り混じりながら、話は進んでいく。この少しテンション高めで元気な、昭和の雑誌のような雰囲気が、私にとっては新鮮で心地いい。
そして何と言っても、この本のビジュアルに勝るとも劣らない内容のおもしろさに驚かされた。
この本は憲法の話をする為に、政治、経済、宗教、哲学、文化など多岐にわたる話題を取り上げ、「憲法ってなんなのよ」ということを教えてくれる。
ということはすなわち、憲法学とは政治学、経済学、宗教学、哲学、文化人類学すべてを内包しているということである。
今あげたジャンルに少しでも興味があるなら、是非その分野の導入本としてこの本を読むことをおすすめしたい。
著者の紹介
著者は社会学者、評論家の小室直樹先生。
とても有名な方らしいのだが、私は「なんとなく名前は聞いたことあるな〜」くらいで、よく存じ上げていなかった。
この本の著者紹介文では以下のように書かれていた。
1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科、大阪大学大学院経済学科を経て、フルブライト留学生としてアメリカに渡る。ミシガン大学大学院で計量経済学、ハーバード大学大学院で心理学と社会学、マサチューセッツ工科大学大学院で理論経済学を学ぶ。帰国後、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程を修了。東京大学法学博士。著書多数。1980年に発表した『ソビエト帝国の崩壊』において、ソ連崩壊を10年以上も前に的確に予言したことは有名。
ー「痛快!憲法学」より引用
正直、すごすぎて途中から暗号を読んでいるのかと錯覚するくらい、良く分からない経歴である。とりあえず、めちゃくちゃ頭が良くて、めちゃくちゃ大学行ってて、すごい予言をしたということは良く分かった。

頭が良い人の憲法学の本なんて、専門用語ばっかりで読めねえよ
と思っているそこのあなた、侮るなかれ。
小室先生は、ものすごく頭がいいからこそ、ものすごく分かりやすく説明してくれるのだ。

本当に頭がいい人は、こんなにも分かりやすく説明ができるのか!
という驚きの体験をもたらしてくれる。
それと同時に、、

普段頭良さそうに難解な言葉を並べて話している人は、実はそれほど頭が良くないのかもしれないなあ・・・
という不思議な安心感も与えてくれる。
少し話はそれたが、小室先生はこの他にも様々な著書を残している。
基本的には政治、経済の本が多いのだが、その他にも数学や外国についての本もあり、とても興味深い。
私もまだこの「痛快!憲法学」一冊を読んだだけである。したがって、他の本を勧めることはできないのだけど、この本の中から気になったキーワードを辿って他の著書を探してみると、もっとディープな世界が広がっていることは間違いないだろう。
本を読むということは、その作者との出会いでもあるのだ。
本の構成
全13章、272ページに及ぶこの本はB5サイズで、表紙のインパクトをさらに強調させる大きさだ。
全てのタイトルがキャッチーで、まんまと興味をそそられてしまう。
最初と最後の章からストーリー性を感じ、間の章はその過程だと分かる。
「果たして憲法は無事によみがえるのか・・!?」と、ハラハラさせられている自分がいる。まるでハリウッド映画の予告のような目次だ。
日本国憲法は死んでいる?
第1章から衝撃的なタイトルだが、この本の本題として語られる、「日本の憲法は死んでいるか生きているか」という考え方について語られている。
ドイツやアメリカが、自国の憲法を死に追いやった歴史をもとに、憲法を生き物としてとらえてみる斬新な視点が示されている。
この考え方をもとに読み進めていき、あなた自身の判断で

果たして今、日本の憲法は死んでいるか、生きているのか?
を考えてみてほしい。
この本は2001年に出版されており、この時点で小室先生は「日本の憲法は死んでいる」と判断されている。
それが仮に本当だとしたら、それから20年経った今、果たして日本の憲法は蘇ったのだろうか・・・!?
そんな風に読んでみるのも、おもしろいかもしれない。
「そんなこと言われても、憲法ってよくわからんしそもそも興味ない」という方へ
この本の序章で小室先生は、
「日本で起きている様々な問題は、原因をたどっていくと、全て憲法に行き着く」
とおっしゃられている。
ここで言う問題は、あなたが抱えている問題ももちろん含まれている。
あなたが今抱えている悩みや問題は何ですか?

その問題の原因は、実は憲法にあるかもしれない・・・
その真偽を確認するためにも、騙されたと思ってこの本を手にとってみてはいかがだろうか。
もしかしたら、光が見えるかもしれないし、闇が深くなるかもしれない。
どちらにせよ、あなたの考え方次第だということだけは、くれぐれもお忘れなく。
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