【デートプラン】猫カフェの推し猫かぼちゃくんとのデート【立て方】

私の推しは近所にある猫カフェの猫、かぼちゃくん。

白いおなかに背中から頭にかけて淡い黄色が走るトラ柄、ふわふわの毛並みにもこもこのまるいフォルム、足は短く顔はぺちゃんこ…そう、彼はマンチカンなのだ。

極めつきがいつも少々不機嫌そうな目元。「簡単にはモノにならない男」ってカンジで最高なのだ。

かくいう私は今年35歳になったばかりの女。仕事に追われて毎日を擦り切れるように過ごしている独身アラサー(いや、そろそろアラフォー?)だ。ちなみに彼氏はいない。

あーあ、今年のクリスマスもひとりぼっちかぁ。
イブは仕事だし、クリスマス当日も予定はない。
友達も全員既婚者だから家族で過ごすって言われてるし…。
乾いた笑いを零しつつ歩く夜の町。その足は自然と行きつけの猫カフェに向かっていた。

「あぁ、いらっしゃい」

中年男性のカフェの店長が人の好さそうな笑顔で迎えてくれる。

店内に入る私にじろりと視線をくれる色とりどりの猫たち。しかし媚びるようにすり寄ったりはしない。そのクールさが堪らない。

私は入口で念入りに手指を消毒し、店内に入った。

いつものボックス席に座り、慣れたように「アイスミルクを。時間はとりあえず2時間で」と注文する。(この店はワンドリンク制なのだ)

店長が手慣れた様子で猫の名前とグラビアの載った手作りの写真集を机に置く。そして言った。

「そういえば、クリスマスにちなんで今ちょっとした企画をしていまして。良ければ参加いかがですか?」
「企画?」
「そう。ウチの猫たちとデートをしよう!っていう」
「え。猫とデート!?」

思わず大きな声が出た。傍の猫用ベッドで居眠りをしていたシャム猫のジェリーちゃんが迷惑そうにこちらを睨む。

店長ははは、と笑いながら、

「といっても、さすがに本当にデートしていただくわけにはいきませんから。こちらの企画用ノートに、お気に入りの猫とのデートコースを書いて、想像の中でデートを楽しんでいただくというものになりますが」
「あ…はは、そうですよねえ」
「他の人の猫デートの様子も見ることが出来ますし、参加していただければドリンク1杯分を無料にいたしますよ。どうです?」
「そうですね…うん、楽しそうだし、やります」

私がうなずくと、店長はハイハイと企画用のノートとペンを持ってきてくれた。

B5サイズの普通の大学ノート。すでに企画に参加した人たちのデートプランがいくつか書かれている。
私はペンを持ち、うーんと宙を見つめた。

デート、か。最後にデートしたのなんていつだっただろう。そのくらい、もうキラキラした恋愛には縁がない私だ。デートプランって言ったって…

その時、「なぁン」と声がして私の隣にかぼちゃくんがすとんと座った。「何してるの?」と言いたげに私の手元をのぞく。

か、かわいい…!
かぼちゃくんが自分からこんなに密着してくれるなんて…!
感極まりながら、私は彼の機嫌を損ねないように彼の毛並みを撫でた。

「私とデートをする相手は…もう決まってるよね」

やわらかい手触りにふふっと笑みをこぼしながら、私はノートに「かぼちゃくんとのデート」と書いた。

かぼちゃくんは愛くるしい見た目とは裏腹に、割とクールな性格だ。他の猫とじゃれることもなくいつも一人で遊んでいるか、居眠りをしている。

一見さんや通い始めたばかりの新規客には決してなつかず、私だって背中を撫でさせてくれたのは通い始めて2か月が過ぎた頃にようやく、だった。

しかし食に対しては人一倍興味が旺盛で、客が猫たちに手づからおやつをあげられる「おやつタイム」には真っ先に寄ってきておやつを要求するし、ミルク系を注文すると必ず傍に寄ってきてグラスをふんふんと嗅いでいる。

また自分の見た目の良さを自覚しているのだろう、撫でさせない割には写真を撮る時には良い被写体になってくれる。お陰で私の「猫カフェフォルダ」は潤いっぱなしだ。

そんなかぼちゃくんとデートをするとしたら…

デートする日は24日のイブがいい。金曜日だから私は仕事帰り。
きっとかぼちゃくんはおなかを空かせているから、まずは猫カフェから近い「ペットと一緒にご飯が食べられるレストラン」に行かなきゃ。

クリスマスだもの、少しくらい値が張ってもイタリアンかフレンチ風のオシャレなところが良い。そして二人でご飯を食べた後は、もちろんクリスマスケーキを出してもらわなきゃね。

もちろんこの時点でかぼちゃくんへのプレゼントは用意しているけど、まだまだ夜はこれからだもの、ここで安易に渡したりなんかはしない。

レストランでおなかいっぱいにした後は、車で海まで飛ばして浜辺デートをしたい。

人間の男とだったら夜景のキレイな場所に行くとか、夜でも営業している遊園地に行くとか、いろいろあるのかもしれないけど、相手は猫だもの。かぼちゃくんが楽しい!って思える場所にしなきゃね。

きれいな夜空、静かな浜辺、潮の香り…星が出ていたら最高だわ。

きっとかぼちゃくんは滅多に来れない砂浜におっかなびっくり足を埋めて、でもだんだんと慣れてそこらじゅうを駆け回るんだろうなぁ。

打ち寄せる波間に足が触れて、びっくりと飛び上がる姿も見れるかもしれない。
私はそれを見て、笑いながらめいっぱい写真を撮る。

そしてかぼちゃくんがはしゃぎ疲れた頃、私はかぼちゃくんと車に戻るの。
あとは猫カフェに帰るだけ。

…けど、物足りない。
まだまだ彼と一緒にいたい。

そんな思いを抱えながら、かぼちゃくんにクリスマスプレゼントを差し出すわ。

「この場で開けてみてくれる?」って言いながら…

かぼちゃくんがプレゼントを開けると、そこには猫用のサンタ衣装と高級マタタビ。
かぼちゃくんはすぐにそのサンタ衣装を着てくれて、ニヒルに笑ってこう言うの。

「ほら、この恰好の俺を抱いてもいいんだぜ。…今夜だけな」

キュン…
私はかぼちゃくんを始めて抱っこし、その体温を存分に堪能し、サンタ衣装を着るかぼちゃくんという奇跡のような存在を写真に何枚か納めるわ。

それが終わるとあっさり衣装を脱いで帰る支度をするクールなかぼちゃくん。
時刻は0時前。まるで魔法の解けたシンデレラのよう。
夢の時間が終わる雰囲気に溜め息をつき、

「あぁ、かぼちゃくんがウチの子だったらなぁ」

とボヤくと、かぼちゃくんはチラと私に目を向けてこう言うに違いないわ。

「もし俺がヨボヨボのじいさんになってもそう思ってくれるなら…その時はもらってくれ」

私の答えはもちろん、YESよ。
だってかぼちゃくんは、どんなにおじいさんになっても可愛らしいに決まってるんだから。

「おや、書き終わりましたか」

アイスミルクを持ってきた店長が私に声をかける。
書いていたページはすでに私の字で埋まろうとしていた。

「…はい」

そういえば…これ、企画に参加した他の人にも見られるんだっけ。
夢小説さながらキラキラした妄想を書き綴ったページが恥ずかしいが、今更どうにもできるわけがない。

私あは照れながらノートとペンを店長に渡し、ミルクの入ったグラスを手に取った。
かぼちゃくんが触ろうと、そのまるい手をちょいちょいとグラスに伸ばしてくる。

「あぁ、ダメだよ」

かぼちゃくんの頭を撫でつつ、私はふと思った。
店長が受け取ってくれるかは分からないけど、クリスマスプレゼントに高級マタタビだけは持参して遊びにこようかな…と。


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